相続・遺言セミナー
箕面市立中央生涯学習センターで「相続・遺言セミナー」を開催しました。同じ豊能支部の行政書士と二人で2時間のセミナーでした。
参加者の方々は相続について日頃からお考えのようで、熱心にお聴きくださり、ありがとうございました。セミナーの内容を一部ご紹介します。
目次
相続は、死亡によって開始する(民法第882条)
「知っているだけで、安心できること」をテーマに、大切な方が亡くなった時点からスタートで相続の流れを考えてみました。
通夜・葬儀・告別式に始まり、1周忌を迎えるまでは家族にとっては慣れないことの行事が次々と、悲しむ間もないくらいにやってきます。そして間違いなく執り行っていかなくてはなりません。
と同時に、亡くなった方の役所関係の手続き、届出、遺産相続、名義変更、解約、払戻しなど・・・
まだまだあります。期限がある手続きもあるので、なかなかのストレスと重労働を伴います。
喪主のお仕事も寺院への連絡や葬儀の決定、親戚・知人への連絡など、葬儀屋さんにお任せでもやはり喪主に最終決定権があり、気配りまで求められる場面もあります。時間がない上、お金がすぐに必要になります。
後に遺された家族が困らないように、事前準備をし、喪主になる方も含めて家族で「もしも・・」に備えて考えることはとても大切な終活だと思います。
亡くなった直後にしなければならないこと
■死亡届を提出 →「埋・火葬許可証」を発行してくれる
■死亡診断書(医師が作成)は相続手続きで必要になるので何枚かコピーをとっておく
■退院の手続き(支払い、搬送)
■通夜や葬儀を葬儀社に依頼
■親戚・知人への連絡(人数の確定)
■遺影の準備
■供物、供花、香典などの取り決め
■喪主の挨拶の内容
■お金の準備(葬儀費用・住職へのお布施・お手伝いしてくれた方への心付けなど)
■弔問客の対応
■納棺
■通夜
■葬儀
■告別式
■出棺
■火葬(骨上げ)
役所などの手続き
■戸籍・・・・「世帯主変更届」亡くなってから14日以内に市区町村に提出
「復氏届」旧姓に戻したい場合
「婚姻関係終了届」配偶者の親族関係を解消したい場合
■健康保険・・「資格喪失届」亡くなってから14日以内に市区町村の国民健康保険担当窓口に提出
*前払いで払い過ぎた保険料は過誤納金として戻ってくる
「葬祭費・埋葬費」亡くなってから2年以内に市区町村の国民健康保険担当窓口
「高額医療費」一定額を超えた分が健康保険から還付される
■年金・・・・「年金受給権者死亡届」厚生年金10日以内、国民年金14日以内に年金事務所等に提出
「未支給年金給付」亡くなった後に遺族が受け取る手続き
「遺族年金」故人の加入していた年金の種類や保険料や受け取る人によって違う
*年金事務所や年金相談センターに問い合わせる。亡くなってから5年以内に手続き
■税金・・・・「所得税準確定申告」死亡した日から4か月以内に相続人が故人の代わり申告する
<準確定申告書を提出する必要のある人>
・個人で事業をしていた方
・不動産収入があった方
・年間2000万円の給与収入があった方
・生命保険や損害保険の満期金や一時金を受け取った方
・公的年金等が400万円を超えている方
・医療費控除の対象となる費用がある方
・給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えている方
「相続税」申告・納付は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
*一日でも遅れると延滞税が課せられるので注意
■その他・・・「電気・ガス・水道・電話・インターネット・クレジットカード」すみやかに支払方
方法変更や停止手続きをする
「運転免許証」すみやかに最寄りの警察署か運転免許センターに返却
「パスポート」すみやかに都道府県のパスポート担当窓口に返却(有効期限内の場合)
相続財産手続き以外に、以上のことはほとんどの方が経験することです。
これらをこなすと同時に相続遺産分割に関する手続きが待っています・・・・
遺産
故人が遺された遺産について把握していないと、スムーズな遺産分割はできません。家は大したお金もないし、争うこともないだろうと多くの家族が対策をしていないのが現実かもしれません。
図:裁判所でもめている件数(裁判所HP:29年度資料)
「全体の75%が5000万円以下でもめている」
もめる原因は様々ですが・・・
法律では「法定相続人」「法定相続分」というのが決まっています。
法定相続人・・・・配偶者は常に相続人
第1順位 子(胎児)
第2順位 直系尊属
第3順位 兄弟姉妹
法定相続分・・・・子がいる場合 → 配偶者1/2 子ども1/2(子の人数で割る)
親(子がいない) → 配偶者2/3 親1/3
兄弟姉妹(子、親がいない)→配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(人数で割る)
何も対策をしなければ、これに沿って進められていきます。もちろん、家族の仲が良く、法律通りに遺産分割が行われなくても相続人全員が話し合い、納得し、合意していれば自由に分けることはできます。
しかし・・・
家族のかたちや価値観が多様化する中、子どもがいない人、障がい者の家族がいる人、事実婚の人、再婚をしている人、おひとりさま、個人企業の経営者・農業経営者、死後は自治体・公益団体に寄付したい人、家族であるペットのことが心配になっている人など法律では思う通りの財産分割はできません。
死亡後の財産や身分事項について、自分の希望が実現できるように民法の決まりにしたがって作成され、法律的に有効になるのは遺言です。
遺言の種類
この中で、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」が一般的です。
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
全文・日付・氏名を遺言者が自筆で書き、印を押して作成 | 公証人が清書をしてくれる遺言 | |
メリット |
・費用がかからない |
・形式不備で無効になる可能性はほぼ ゼロ ・紛失・破損のおそれない ・相続人間での争いの可能性低い ・家庭裁判所での検認手続き不要 |
デメリット | ・民法の要件を満たしていないと無効 ・紛失・破損・破棄・変造・隠匿のお それあり ・家庭裁判所での検認手続きあり |
・費用がかかる ・戸籍謄本、登記簿謄本の提出などの 手間がかかる ・証人が2人必要 |
日本公証人連合会HP/裁判所HP資料より
遺言が作成できる人は?
■15歳に達した者(民法961条)親権者の同意は不要
■意思能力が必要
*意思能力とは遺言書に記載した内容、及びその結果生じる法律的な効果について理解し、判断で
きる能力
認知症 → 軽度で意思能力があれば遺言を作ることはできるが・・・
自筆証書では遺言者の意思能力を証明するのは難しい
✔公証人立会いのもと、公正証書で作成するのが望ましい
✔遺言書作成時の意思能力について医師の診断書
✔その他、意思能力があったという証拠を残す
成年被後見人→事理を弁識する能力を一時回復した時は2人以上の医師の立会いのもとできる
(民法962条)
*遺言者に保佐人・補助人がついていたとしても同意の必要はない(民法962条)
遺言の変更・撤回
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、以前にした遺言の全部又は一部を撤回することができる。
(民法1022条)
遺言を書いても、状況は変化するので、不動産も自由に売買でき、銀行口座のお金が減ってしまっても、遺言に縛られることはありません。書き直すことは自由です。
遺言は、亡くなった人が一方的に受け取る人、財産を決めて、死亡後、財産を移転させます。
「死因贈与契約」は贈与者(贈る人)と受贈者(もらう人)がお互い意思表示を確認した上で生前に契約し、贈与者が死亡したときに財産が移転する。契約書を公正証書にしておく。
現在では、遺言だけでなく、家族信託、死因贈与契約、死後事務委任契約、任意後見契約など高齢期の安心のために作成される方も少しづつ増えてきました。個々の財産状況や生活環境によって、一概には何がいいのかは様々です。専門家に相談して自分の希望を叶えると同時に、遺されたものが仲良く、暮らしていくことができるように、備えることは大切なことです。
遺言事項と付言事項
遺言事項・・・法律上の効力を生じさせることができる事項
■相続に関すること(相続分割合・相続分割方法など)
■財産の処分に関すること(第3者への遺贈・寄付行為など)
■身分に関すること(認知・未成年後見人など)
■遺言の執行に関すること(遺言執行者の指定)
付言事項・・・円満な相続のために財産に関すること以外の内容 法的効力はない
■遺言書を書いた理由
■家族への気持ち
■感謝の気持ち
■財産分配の理由
■頼んでおきたいこと・・・
書いても効力のない付言事項ですが、遺言者の率直なメッセージは、スムーズな相続のためには大きな役割があります。
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